さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

PMBOK第7版 原理・原則⑧|プロセスと成果物に品質を組み込むこと

📌 はじめに

原理・原則④では、プロジェクトは価値を実現するために行うものだと述べられていました。

では、価値のある成果物とは何でしょうか。それは、ステークホルダーのニーズを満たし、実際に使える状態で届けられるものです。どれだけ方向性が正しくても、成果物そのものに問題があれば、価値は実現しません。

価値を届けるためには、品質の良い成果物が必要です。本章「プロセスと成果物に品質を組み込むこと」は、その「品質とは何か」「どう作り込むか」を扱っています。

価値の実現を目指す④と、その実現を支える品質を扱う⑧は、目的と手段の関係にあります。


「品質」とは何か

品質というと、「バグがない」「仕様通りに動く」といったイメージを持ちがちです。しかしPMBOKが定義する品質は、より広い意味を持っています。

品質とは、プロダクト・サービス・成果物の特性が、要求事項を満たしている度合いです。これには顧客の明示的なニーズだけでなく、口に出されていない暗黙のニーズを満たす能力も含まれます。

品質の測定には2つの軸があります。

  • 受入基準への適合:仕様や条件を満たしているか
  • 使用適合性:実際の使い方に合っているか

仕様を満たしていても使いにくければ、品質が高いとは言えません。この2つの軸でバランスよく評価することが求められます。

また、受入基準は最初に決めたものをそのまま使い続けるものではありません。プロジェクトが進んで試行や優先順位の見直しが行われるたびに、「この基準はまだ正しいか」を問い直す必要があります。成果物を受け入れる段階で初めて基準のズレに気づくのでは遅く、プロセスの中で継続的に確かめておくことが重要です。


品質の8つの次元

PMBOKは品質を次の8つの観点で捉えています。プロジェクトの性質によって重視する次元は変わりますが、成果物を評価する際の視点として活用できます。

パフォーマンス。意図したとおりに機能するか。

適合性。使用に適合しているか、仕様を満たしているか。

信頼性。実行・作成のたびに一貫した基準を満たしているか。

回復力。予期しない障害に対処でき、迅速に回復できるか。

満足度。エンドユーザーから前向きなフィードバックを得られるか。使いやすさやユーザー体験を含む。

統一性。同様の方法で作られた他の成果物と同等の品質になっているか。

効率性。最少のインプットと労力で最高のアウトプットを生み出しているか。

持続可能性。経済的・社会的・環境的な観点で好ましい影響をもたらすか。


品質は「成果物」だけでなく「プロセス」にも向けられる

見落とされがちな点として、品質の対象はプロダクトや成果物だけではありません。

成果物の品質は検査とテストによって評価されます。一方、プロジェクトの活動やプロセス自体の品質はレビューと監査によって評価されます。

どちらも、エラーや欠陥の検出予防の両方に焦点を当てます。後から欠陥を見つけて修正するよりも、最初から欠陥が生まれにくいプロセスを設計する方が、コストも時間も大幅に節約できます。

品質はプロジェクトの終盤に確認するものではなく、プロセスの設計段階から組み込む必要があります。


品質活動の目的は「無駄を減らし、確率を上げること」

品質活動の目標は、成果物が顧客やステークホルダーの目標を、できるだけ無駄の少ない形で満たすようにすることです。

そのために意識すべきことは2つです。

  • 成果物を迅速に提供する
  • 欠陥を早期に特定・防止し、手直しや廃棄を減らす

この考え方は、要求事項があらかじめ詳細に定義されているケースでも、アジャイルのように段階的に詳細化されていくケースでも変わりません。どちらにおいても、品質への継続的な注意が成果を左右します。

品質への継続的な注意は、手直しの削減だけでなく、どこに問題があるのかを見えやすくします。その結果、意思決定がしやすくなり、プロセスの継続的改善にもつながります。


プロセスと成果物に品質を組み込むとは

この原理は、品質を「後から確認するもの」から「最初から作り込むもの」へと視点を変えるための考え方です。

読む側が現場に持ち帰れる問いは、次の2つに集約できます。

  • この成果物は、仕様を満たすだけでなく、実際に使う人のニーズに応えているか?
  • 品質の問題が起きたとき、それはプロセスのどこに原因があるか?

成果物の品質はプロセスの品質に依存します。プロセスを見直すことが、成果物の改善への最短ルートです。

それが「プロセスと成果物に品質を組み込むこと」です。

なお、品質活動の好ましい成果については、PMBOK本文に具体的な例が示されています。ここでは要点に絞っているため詳細な列挙は省略しますが、関心のある方は原文を確認すると理解が深まります。

 

▶ 次回:PMBOK第7版 原理・原則⑨|複雑さに対処すること


12の原理・原則全体を整理したい方へ

本記事は、PMBOK第7版 第3章「12の原理・原則」の一部です。

原理・原則全体の構造や読み方については、以下のまとめ記事で整理しています。

PMBOK第7版 第3章|12の原理・原則をどう読むべきか


📚 参考

PMI『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第7版』

※本記事はPMBOKガイド第7版の学習・実践促進を目的とした解説記事です。引用・要約は学習目的の範囲で行っています。


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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。

参考書籍:PMBOKガイド第7版(Amazon)