さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

PMBOK第7版 原理・原則⑦|状況に基づいてテーラリングすること

📌 はじめに

プロジェクトを進めるなかで、こんな感覚を持ったことはないでしょうか。

  • 「この手順、うちのチームには合っていない気がするけど、決まりだから従っている」
  • 「前のプロジェクトと同じやり方を使ったのに、なぜかうまくいかなかった」
  • 「プロセスが多すぎて、肝心な仕事に時間が取れない」

PMBOK第7版の原理・原則⑦「状況に基づいてテーラリングすること」は、こうした「合わない感」に向き合うための考え方です。

方法論に合わせてプロジェクトを動かすのではなく、プロジェクトに合わせて方法論を調整する。

それがテーラリングの基本的な姿勢です。


「テーラリング」とは何か

テーラリング(Tailoring)とは、洋服の仕立てと同じ語源です。既製品をそのまま着るのではなく、着る人の体に合わせて仕立て直す。

プロジェクトマネジメントにおけるテーラリングも同じ発想です。

  • 組織が定めたプロセスや方法論を前提にしつつ
  • そのプロジェクト固有の目標・チーム・環境・複雑さに合わせて
  • アプローチ、ガバナンス、プロセスを意図的に調整する

「規則を破る」ことではなく、「規則を賢く使う」ための行動です。

重要なのは、テーラリングは一度行って終わりではないという点です。プロジェクトの進行とともに状況は変わるため、継続的に見直しと調整を繰り返します。

なお、組織の標準方法論をそのまま採用するという判断自体も、テーラリングの一形態です。「何も変えない」という選択もまた、意思決定の結果です。


なぜ「そのまま使う」ではいけないのか

一見同じに見えるプロジェクトでも、その内実は大きく異なります。

  • 組織の文化や規模が違う
  • チームの経験値やスキルセットが違う
  • ステークホルダーの関与度や期待が違う
  • 不確かさの度合いやリスク許容度が違う

同じ方法論をそのまま適用すると、必要以上のプロセスを踏んでいたり、逆に必要な手順が抜け落ちたりします。

テーラリングされていないアプローチは、余計なコストやスケジュール遅延を生む一方で、プロジェクトの成果にほとんど貢献しないことがあります。

過不足ない」プロセスを使うことが、テーラリングのゴールです。


何を「調整」するのか

テーラリングの対象は広範囲にわたります。

開発アプローチ
ウォーターフォール型、アジャイル型、あるいはその組み合わせ(ハイブリッド)。プロジェクトの性質によって最適な形は変わります。

ガバナンスの仕組み
意思決定の権限、報告の頻度と形式、承認プロセスの簡略化または強化。

プロセスと作成物
どのプロセスを採用し、どの成果物を作成するか。すべてを作る必要はなく、価値をもたらすものだけを選ぶ。

方法・テンプレート
組織の標準テンプレートをそのまま使うか、プロジェクトに合わせて修正するか。

これらを組み合わせて、「このプロジェクトに最も適した形」を作り上げるのがテーラリングです。


テーラリングは「独断」ではない

注意すべきは、テーラリングはプロジェクト・チームが勝手に行うものではないという点です。

組織の方針や手続きは、チームがテーラリングできる範囲を規定しています。プロジェクト・チームはPMOや関連ステークホルダーと協力しながら、ガバナンスの制約のなかで判断を行います。

また、テーラリングの決定は関係者に共有される必要があります。チームメンバーが採用した方法とプロセスを認識していなければ、実行の一貫性が保てません。

テーラリングはチームが主体的に関わるプロセスでもあります。決定への参加がコミットメントを高め、プロセスを形骸化させない効果があります。


テーラリングが生み出すもの

適切にテーラリングされたアプローチは、プロジェクトに複数の好ましい効果をもたらします。

リソースの効率化。不必要なプロセスや作成物が減ることで、本来の仕事に集中できます。チームが「なぜこのプロセスが必要か」を理解した上で動くため、作業の無駄も減ります。

顧客志向の強化。テーラリングの基準の一つが顧客・ステークホルダーのニーズであるため、プロジェクトの方向性が成果本位になります。

組織の学習への貢献。テーラリングした結果として得られた知見は、教訓として蓄積され、次のプロジェクトや方法論の改善に活かされます。実験を通じて新しい実務慣行が生まれることもあります。

テーラリングはプロジェクト単体の最適化にとどまらず、組織全体の適応力を高めることにつながります。


状況に基づいてテーラリングするとは

この原理は、「決まった正解はない」という現実を受け入れるための視点です。

読む側が現場に持ち帰れる問いは、次の2つに集約できます。

  • このプロジェクトに、このプロセスは本当に必要か?
  • チームとステークホルダーの状況に、このアプローチは合っているか?

方法論を起点にするのではなく、目の前のプロジェクトを起点にする。

それが「状況に基づいてテーラリングすること」です。

 

▶ 次回:PMBOK第7版 原理・原則⑧|プロセスと成果物に品質を組み込むこと


12の原理・原則全体を整理したい方へ

本記事は、PMBOK第7版 第3章「12の原理・原則」の一部です。

原理・原則全体の構造や読み方については、以下のまとめ記事で整理しています。

PMBOK第7版 第3章|12の原理・原則をどう読むべきか


📚 参考

PMI『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第7版』

※本記事はPMBOKガイド第7版の学習・実践促進を目的とした解説記事です。引用・要約は学習目的の範囲で行っています。


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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。

参考書籍:PMBOKガイド第7版(Amazon)