
PMBOK第7版の第3章では、プロジェクトマネジメントの「12の原理・原則」が提示されます。
「なぜかプロジェクトがうまく回らない」「これだけ努力しているのに評価につながらない」――そう感じる場面があるかもしれません。
明確な失敗があるわけではなくても、進め方のどこかに小さな歪みが生まれていることがあります。そうした歪みは、やがて問題として表面化することもあれば、気づかないまま成果に影響することもあります。
12の原理・原則は、問題が起きたときの対処法ではありません。プロジェクトの進め方そのものに働きかけ、自然と良い方向へ進む状態を生み出すための基本的な考え方です。
なぜそれが可能なのか。その理由は、各原理・原則の内容を見ていく中で明らかになります。
この章は手順書ではありません。ここで示されるのは、「何をやるか」よりも「どう考えるか」という判断の軸です。
原理・原則はルールブックではない
原理・原則という言葉から、「守らなければならない規則」を想像するかもしれません。しかし、プロジェクトマネジメントの原理・原則は、法律や規範のような拘束力を持つものではありません。
プロジェクトは、組織の文化、成果物の性質、チーム構成、ステークホルダーの期待などによって大きく姿を変えます。したがって、原理・原則は「正解を示す答え」ではなく、状況に応じてより良い判断を導くための指針と捉えるほうが自然です。
「PMI倫理・職務規定」との位置づけ
原理・原則は倫理規範そのものではありませんが、価値観とは切り離せません。
PMI倫理・職務規定では、次の4つの価値が示されています。
- 責任
- 尊重
- 公正
- 誠実
12の原理・原則は、これらの価値と整合する形で整理されています。原理・原則は「どう行動するか」の指針を示し、倫理は「どうあるべきか」という土台を支えます。両者は役割が異なるだけで、対立するものではありません。
なぜ原理・原則は12個なのか
12という数に特別な意味があるわけではありません。これは、世界中の実務者の経験とフィードバックを通じて整理された結果です。
重要なのは、これらが特定の方法論を示すものではないという点です。状況が変わっても通用する、プロジェクト運営の基本的な考え方としてまとめられています。
一般的なマネジメントとの重なり
プロジェクトマネジメントは特別な世界の話ではありません。一般的なマネジメントと重なる部分も多くあります。
たとえば、「価値に焦点を当てること」は、プロジェクトでも定常業務でも共通する重要な視点です。
違いがあるとすれば、プロジェクトは期間が限られ、不確実性が高いことです。その環境の中で価値を実現するための指針として、12の原理・原則が整理されています。
12の原理・原則(順序なし)
- 勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードであること
- 協働的なプロジェクト・チーム環境を構築すること
- ステークホルダーと効果的に関わること
- 価値に焦点を当てること
- システムの相互作用を認識し、評価し、対応すること
- リーダーシップを示すこと
- 状況に基づいてテーラリングすること
- プロセスと成果物に品質を組み込むこと
- 複雑さに対処すること
- リスク対応を最適化すること
- 適応力と回復力を持つこと
- 想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること
※LINK先に個別に各原理・原則について、解説記事を作成しています。
原理・原則の読み方のコツ:チェックリストにしない
原理・原則の12項目を見たとき、多くの人は「順番に実行すればよいのか」と考えるかもしれません。しかし、そうではありません。
たとえば、あるプロジェクトで問題が発生したとき、
- リスク対応を最適化すること
- システムの相互作用を認識し、評価し、対応すること
- ステークホルダーと効果的に関わること
これらは同時に関係します。どれか一つを順番通りに実行するというより、複数の視点を横断的に使う場面のほうが多いはずです。
たとえば「今日はリスク管理を実施した」「次は品質だ」と項目ごとに機械的に処理してしまうと、本来同時に考えるべき相互作用を見落とします。
もしチェックリストとして扱ってしまうと、
- 形式的に守ることが目的になる
- 状況に応じた判断が弱くなる
- 原理同士の相互作用を見落とす
という状態になりかねません。
この章は、「覚える」ための章ではなく、プロジェクトの質を高めるための章です。実務の場面を思い浮かべながら読むことで、原理・原則の意味がより立体的に見えてきます。
次節から各原理へ
ここまでが前提整理です。
次節からは、PMBOK7版の3.1〜3.12に記載されている各原理・原則を個別に確認していきます。
暗記対象としてではなく、実務判断を支える視点として読み進めてください。
▶ 次回:PMBOK第7版 原理・原則①|勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードであること
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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。
用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。