さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

PMBOK第7版 原理・原則⑨|複雑さに対処すること

📌 はじめに

プロジェクトを進めていると、こんな場面に出くわすことがあります。

  • 「問題が起きたが、どこが原因なのか特定できない」
  • 「関係者が増えるほど、調整が難しくなっていく」
  • 「計画した通りに進んでいるのに、想定外のことが次々と起きる」
  • 「一つの仕様変更を承認したら、まったく関係ないと思っていた別の領域で、想定外の問題が派生した」

こうした状況は、プロジェクトが持つ「複雑さ」に直面しているサインです。

PMBOK第7版の原理・原則⑨「複雑さに対処すること」は、複雑さを消し去ることを目指すのではなく、複雑さが生み出す影響を見極め、それに応じてアプローチを調整し続けることを求めています。


複雑さとは何か

複雑さとは、単に要素が多いことではありません。人の振る舞い、システムの相互作用、不確かさ、曖昧さが絡み合うことで、マネジメントが難しくなるプロジェクトの特性です。

重要なのは、複雑さは「コントロールできない」という点です。プロジェクトは多数の要素が互いに影響し合うシステムであり、その相互作用の数と性質が複雑さの度合いを決めます。プロジェクト・チームにできることは、複雑さそのものを取り除くことではなく、複雑さから生じる影響に対処するよう自らの行動を修正することです。

また、複雑さはプロジェクトの開始時だけでなく、ライフサイクルのどの時点でも突然現れることがあります。計画が順調に見えていても、油断できません。

こうした複雑さは、価値、スコープ、コミュニケーション、ステークホルダー対応、リスクの捉え方にも影響を及ぼします。


複雑さが生まれる4つの要因

① 人の振る舞い
チームメンバーやステークホルダーの行動・態度・経験は人それぞれ異なります。個人的な事情やプロジェクト目標との対立、遠隔地のステークホルダーとのタイムゾーン・言語・文化の違いなど、人が絡む場面では予測しにくい複雑さが生じます。

② システムの振る舞い
プロジェクトの構成要素は互いに依存し合っています。異なる技術システムを統合する場面などでは、ある箇所での変更が別の箇所に波及し、原因と結果の関係が不明確になることがあります。このような相互依存が積み重なるほど、プロジェクト全体の見通しが難しくなります。

③ 不確かさと曖昧さ
「曖昧さ」は、何をすべきかの方向性がはっきりしない状態です。選択肢が多すぎる、あるいは最善の選択が見えないときに生じます。
「不確かさ」は、課題や出来事、解決策についての理解が不十分な状態です。過去の経験では想定できない「未知の未知」も含まれます。
この2つが重なると、因果関係がさらに見えにくくなり、リスクの見積もりも難しくなります。

④ 技術革新
新しい技術は既存のプロセスや作業方法を根底から変えることがあります。その技術がどう使われるかがまだ不明なうちは、不確かさを生み出し、複雑さを増大させます。場合によっては、イノベーションがプロジェクトを特定の方向へ引っ張ったり、逆に中断に追い込んだりすることもあります。


複雑さは予測も特定も難しい

複雑さが厄介なのは、事前に予測しにくく、発生してからも原因の特定が難しいことです。

複雑さはリスクや依存関係、イベントなど数多くの要素が絡み合った結果として生まれます。一方で、いくつかの小さな要因が組み合わさって、一つの大きな複雑な事象を生み出すこともあります。これが「なぜこうなったのか」をつかみにくくする理由です。

また、ステークホルダーの数や多様性が増すほど複雑さは増幅されます。規制機関、国際的な関係者、複数のベンダーや専門分野にまたがるサブコントラクターなど、関与する主体が多ければ多いほど、個々の判断がプロジェクト全体に影響を与えやすくなります。


複雑さへの対処法

複雑さに対処するために有効なのは、プロジェクトを個別の要素ではなく、相互に影響し合う全体として見る「システム思考」の視点です。部分だけを見ていると、複雑さの兆候を見逃すことがあります。

具体的には、以下のような取り組みが有効です。

  • プロジェクト全体を継続的に観察し、複雑さの兆候を早期に察知する
  • 過去のプロジェクトの経験や教訓を活かし、パターンを読む
  • 複雑な適応型システムの考え方を取り入れ、変化に柔軟に反応できる体制を整える
  • 小さな実験を通じて、不確かさを少しずつ減らしていく

複雑さは完全には防げませんが、兆候に早く気づくことで、アプローチや計画を適切なタイミングで修正できます。対処の鍵は、早期察知と継続的な適応です。


複雑さに対処するとは

この原理は、複雑さを「避けるべき例外」ではなく、プロジェクトでは起こりうるものとして受け止めることから始まります。

読む側が現場に持ち帰れる問いは、次の2つに集約できます。

  • 今のプロジェクトで、どこに複雑さの兆候が現れているか?
  • その複雑さに対して、アプローチや計画を見直す必要があるか?

複雑さをなくそうとするのではなく、それと向き合いながら進む力を育てること。

それが「複雑さに対処すること」です。

 

▶ 次回:PMBOK第7版 原理・原則⑩|リスク対応を最適化すること


12の原理・原則全体を整理したい方へ

本記事は、PMBOK第7版 第3章「12の原理・原則」の一部です。

原理・原則全体の構造や読み方については、以下のまとめ記事で整理しています。

PMBOK第7版 第3章|12の原理・原則をどう読むべきか


📚 参考

PMI『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第7版』

※本記事はPMBOKガイド第7版の学習・実践促進を目的とした解説記事です。引用・要約は学習目的の範囲で行っています。


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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。

参考書籍:PMBOKガイド第7版(Amazon)