さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

PMBOK第7版 原理・原則⑥|リーダーシップを示すこと

📌 はじめに

PMBOK第7版の第3章では、プロジェクトをより良い方向へ導くための原理・原則が示されています。そのひとつが「リーダーシップを示すこと」です。

しかし原文を読んでも、「リーダーシップ」という言葉は抽象的で、何をどのように理解すればよいのか掴みにくいと感じる方も多いかもしれません。

本記事では、PMBOK第7版「3.6 リーダーシップを示すこと」の内容を丁寧に整理し、原文の重要事項を落とさずに構造を明らかにします。そのうえで、ソフトウェア開発プロジェクトの文脈に引き寄せながら理解を深めていきます。


📖 原文の要約

「リーダーシップを示すこと」の核心を5つのポイントで整理します。

① リーダーシップは役職・権限と切り離して考える

PMBOKは、リーダーシップと「権限」は別物であると述べています。

「権限」とは組織から付与された統制の力です。PM職に任命されれば権限は与えられます。しかし権限だけで人が動くわけではありません。チームをビジョンに向けて動機づけ、個人の利益をプロジェクトの目標に合致させること——それがリーダーシップです。

例:「スクラムマスターに正式な権限はないが、チームの動きを引き出す」——これはリーダーシップの一例です。


② リーダーシップはチーム全員が発揮できる

高いパフォーマンスを発揮するプロジェクトでは、PMだけでなくスポンサー、テックリード、チームメンバーなど複数の人がそれぞれの立場でリーダーシップを示します。

ただし、各自が独立して動くのではなく、共通のゴールに向けて補完し合うことが前提となります。

例:スポンサーが優先順位を示す → テックリードが実現方法を提案する → PMが合意形成を進める。こうした連動が機能するチームの姿です。


③ 状況に応じてリーダーシップ・スタイルを使い分ける

PMBOK第7版は、独裁型・民主主義型・自由放任型・指揮型・参加型など複数のリーダーシップ・スタイルを挙げています。そして、単一の正解があるのではなく、状況に応じて要素を取り入れ、組み合わせることが重要であるとしています。

状況例:

状況 有効なスタイル
本番障害・危機的状況 指揮型(迅速に方向を示す)
高スキル・自律的なエンジニアチーム 委任型(権限を渡し任せる)
上位管理職間で優先順位が対立 中立的なファシリテーション

例:本番障害の場面では、議論を深めるよりも「いまはこの手順で進める」と明確に示す方が混乱を防ぐことがあります。
一方で平時に同じ態度を続ければ、チームの主体性は失われます。


④ 人の動機付けを理解することが土台になる

PMBOK第7版では、動機付けの要因として以下が挙げられています。

  • 金銭・評価(外発的動機)
  • 自律性・成長の機会・個人的な貢献感(内発的動機)
  • 説得力のある目的(パーパス)

ソフトウェア開発の現場では、「自分のコードがどのような価値を生むのか」「技術的に成長できているか」といった内発的動機が強く意識される場面も少なくありません。PMはこうした動機の違いを理解したうえで関わる必要があります。


⑤ リーダーの性格・誠実さが信頼の基盤

PMBOK第7版は、リーダーの個人としての姿勢や価値観が重要であると述べています。高いスキルがあっても、信頼されなければ影響力は機能しません。

有能なリーダーの特徴として、次のような姿勢が挙げられます。

  • 正直さ・誠実さ・倫理的な行動を示すこと
  • 透明性を重視し、利他的に振る舞うこと
  • 必要に応じて他者に助けを求めること
  • 自らの言動が周囲の手本になることを自覚していること

🛠 ソフトウェア開発PMへの補足

ビジョンとゴールの明確化

  • チームを合意された目標に集中させる
  • プロジェクト成果が何を変えるのかを言語化する

コミュニケーション

  • 相手(エンジニア、経営層、顧客)に応じて伝え方を変える
  • 傾聴と対話を通じて理解を促進する

人材育成・チームビルディング

  • コーチングとメンタリングを行う
  • 貢献を認める
  • 成長の機会を提供する
  • 権限を委譲する

意思決定と問題解決

  • 協働的な意思決定を促進する
  • 阻害要因を特定し対処する
  • コンフリクトについて交渉し解決する

学習文化の醸成

  • 「早期に失敗し、素早く学ぶ」という姿勢を促す

💡 現場でよくある誤解

誤解①「PMがすべてを主導しなければならない」

PMBOKは、チームの誰もがリーダーシップを示し得るとしています。PMがすべてを抱え込む必要はありません。PMの役割は自分が全部リードすることではなく、チームの中でリーダーシップが発揮されやすい環境を作ることです。

誤解②「リーダーシップ=強い統制」

状況によって有効なスタイルは異なります。常に強く統制することが正解ではありません。 危機時には指揮型が有効ですが、平時の高スキルエンジニアチームには「委任型」や「参加型」の方が生産性が高まります。

誤解③「権限があれば十分」

権限は統制の手段です。人を動かす力とは別の概念です。内発的に人を動かすためにはリーダーシップが重要です。


📝 まとめ

  1. リーダーシップは権限とは別の概念である
  2. チームの誰もがリーダーシップを示し得る
  3. 状況に応じてスタイルを使い分ける
  4. 人の動機付けを理解する
  5. 誠実さと信頼が基盤となる

本記事が、PMBOK原文理解と、日々の現場実践の橋渡しになれば幸いです。


【補足】「性格」という言葉

このPMBOK第7版の「リーダーシップを示すこと」の節には、

「リーダーには個人の性格が重要である」

という文章が記載されています。

「性格」という言葉は、生まれ持ったものや変えにくいものを意味するようにも受け取れます。私も、「性格が悪い人はリーダーにしないように工夫しないとダメなの?」「そもそも悪い性格と良い性格って何?」と感じました。
しかしPMBOKは、同じ3.6の中で「スキルの育成を継続する」と明示し、3.2では「個人とチームの学習および育成」を原理として掲げています。

その全体構造を踏まえると、ここで言う「性格」は固定された気質ではなく、正直さや誠実さ、倫理的行動といった行動として表れる人物の在り方を指していると理解するのが自然です。・・・非常にわかりにくいです。

 

▶ 次回:PMBOK第7版 原理・原則⑦|状況に基づいてテーラリングすること


12の原理・原則全体を整理したい方へ

本記事は、PMBOK第7版 第3章「12の原理・原則」の一部です。

原理・原則全体の構造や読み方については、以下のまとめ記事で整理しています。

PMBOK第7版 第3章|12の原理・原則をどう読むべきか


📚 参考

  • PMI『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第7版』

※本記事はPMBOKガイド第7版の学習・実践促進を目的とした解説記事です。引用・要約は学習目的の範囲で行っています。


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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。

用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。

参考書籍:PMBOKガイド第7版(Amazon)