さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

PMBOK第7版 原理・原則⑫|想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること

📌 はじめに

プロジェクトで新しいシステムや仕組みを導入した後、こんな状況を目にしたことはないでしょうか。

  • 「システムは完成して納品したのに、現場がほとんど使っていない」
  • 「新しいプロセスに切り替えたはずなのに、気づけば以前のやり方に戻っていた」
  • 「変更を伝えたが、なぜ変えるのかが伝わっておらず、抵抗が続いている」

こうした状況は、成果物は完成しても、変革が定着していないことを示しています。

PMBOK第7版の原理・原則⑫「想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること」は、プロジェクトの成果を本当の意味で価値に変えるためには、影響を受ける人々が新しい状態に移行できるよう働きかけることが必要だと述べています。


「変革を届ける」とはどういうことか

プロジェクトは、新しいシステム、プロセス、サービスといった成果物を生み出します。しかし成果物が完成しても、それを使う人や組織が新しいやり方に移行できなければ、期待していた効果は得られません。

つまりプロジェクトには、成果物を届けることに加えて、影響を受ける人々が現状から新しい状態へと移行できるよう支援することが求められます。この取り組みを体系的に行うのが「チェンジマネジメント」です。

ここで一つ注意が必要です。チェンジマネジメントは、プロジェクト内でスコープや仕様の変更を承認・却下する「変更管理プロセス」とは別物です。変更管理が文書や計画を対象にするのに対し、チェンジマネジメントは人の行動や組織の文化を対象にします。

プロジェクトはその性質上、常に何か新しいものを生み出します。そのため、プロジェクト・マネジャーは変革を推進する「変革エージェント」としての役割も担っています。


変革はなぜ起きるのか

組織の変革には、内側から生まれるものと、外側から迫られるものがあります。

内部要因としては、新たな能力の獲得や業務上のパフォーマンス・ギャップへの対応があります。既存のやり方では限界が見えてきたとき、組織は変わる必要を感じます。

外部要因としては、技術の進化、人口構造の変化、社会経済的な圧力などがあります。市場や規制環境が変わることで、組織は望む・望まないにかかわらず変革を求められます。

どちらの場合も、変革はその組織だけでなく、関係する業界全体にも波及することがあります。


変革への抵抗は「性格」ではなく「環境」の問題

変革を進めようとすると、必ず抵抗に直面します。変化を嫌がる人を「保守的な性格」と捉えがちですが、PMBOKはそれを主な原因とは見ていません。

最も大きな理由は、組織や職場の文化そのものが保守的であることです。個人の性格の問題として片付けてしまうと、本質的な対処ができません。

だからこそ、効果的なチェンジマネジメントは強制的なアプローチではなく、動機付けと双方向のコミュニケーションを重視します。変革のビジョンやゴールをプロジェクトの早い段階から丁寧に伝え、変革のベネフィットと業務への影響を組織のあらゆる階層に届けることが、受け入れられる環境をつくります。また、抵抗する人の声に耳を傾けることで、見落としていた正当な懸念が見つかることもあります。


変革のスピードは「組織の吸収能力」に合わせる

変革を急ぎすぎることは、かえって逆効果になります。短期間に多くのことを変えようとすると、人々は変化を吸収しきれず、疲労や抵抗が生まれます。

変革のスピードは、組織の変革への意欲、コスト、ステークホルダーの能力、そして変化を受け入れられる環境に合わせて調整する必要があります。全員が変革のベネフィットに同意していても、実際に行動を変えるのは難しいものです。「理解している」と「実際に動く」の間には大きな距離があります。

また、変革はプロジェクトの完了とともに終わりではありません。人々が以前のやり方に戻らないよう、プロジェクト終了後にも変革を定着させる活動が必要になることがあります。


想定した将来の状態を達成するために変革できるようにするとは

この原理は、プロジェクトの成果物を届けることと、変革を根付かせることは別の取り組みだという認識から始まります。成果物が完成しても、使う人が変われなければ、価値は実現しません。

読む側が現場に持ち帰れる問いは、次の2つに集約できます。

  • このプロジェクトの成果物を受け取る人たちは、新しい状態に移行できる準備ができているか?
  • 変革のビジョンと理由を、関係するすべての人に届けられているか?

変革を「完了させるもの」ではなく「定着させるもの」として捉え、人々が新しい状態に移行できるよう継続的に働きかけていくこと。

それが「想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること」です。


12の原理・原則全体を整理したい方へ

本記事は、PMBOK第7版 第3章「12の原理・原則」の一部です。

原理・原則全体の構造や読み方については、以下のまとめ記事で整理しています。

PMBOK第7版 第3章|12の原理・原則をどう読むべきか


📚 参考

PMI『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第7版』

チェンジマネジメントの詳細については、PMI『組織のチェンジマネジメント:実務ガイド』に記載されています。

※本記事はPMBOKガイド第7版の学習・実践促進を目的とした解説記事です。引用・要約は学習目的の範囲で行っています。


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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。

参考書籍:PMBOKガイド第7版(Amazon)