さてさて、そろそろ何か始めないとな

さいたま市のソフトウェアエンジニアのブログ

PMBOK第7版 原理・原則①|勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードであること

📌 はじめに

PMBOK第7版では、プロジェクトマネジメントを支える12の原理・原則が示されています。
その最初に置かれているのが「良いスチュワードであること」です。

なぜ最初の原理・原則に「スチュワード」が置かれているのでしょうか。

それは、プロジェクトマネジメントを「成果を出す技術」ではなく、「託されたものに対する責任の態度」として再定義しているからではないでしょうか。

本稿では、スチュワードという概念を用語説明にとどめず、その責任の構造に着目して整理します。


スチュワードとは何か

「Steward」という言葉は古英語に由来し、「場や資産を守る人」という意味を持ちます。

歴史的には、王や貴族の財産を管理する執事がスチュワードでした。現代でも、航空機の客室乗務員をスチュワードと呼ぶことがあります。

共通しているのは、所有していないものを預かり、守る立場という点です。

プロジェクトマネジャーも同様に、次のようなものを一時的に託されています。

  • 組織の資源
  • 予算
  • チームの時間と能力
  • ステークホルダーの信頼
  • 社会や環境への影響

これらは、プロジェクトマネージャーの所有物ではありません。

それでも意思決定は行われ、影響は発生します。

そしてその結果について説明責任を負います。

所有していないが、責任はある。

この非対称な構造こそが、スチュワードという言葉を必要とする理由です。

プロジェクトマネージャーは成果の所有者ではありません。しかし、影響の説明責任の焦点に立ちます。

この構造を理解せずに技術だけを学んでも、本質には届きません。


スチュワードシップとは何か

PMBOKでは、スチュワードシップを組織内外の責任を含む概念として説明しています。

プロジェクトの意思決定は、財務的影響だけでなく、社会的影響や環境的影響にも及びます。

意思決定はプロジェクトの枠を超えて波及します。

あなたは、成果を最大化する管理者として判断しますか。それとも、影響を引き受けるスチュワードとして判断しますか。

PMBOKが抽象的に見えるのは、現実の構造を丁寧に言語化しているからです。

組織には利害があり、資源には限界があり、対立は生まれます。

それらをどう扱うか。その態度を最初に定義しているのがスチュワードシップです。


スチュワードシップを構成する4つの要素

PMBOKでは、スチュワードシップに以下が含まれると整理されています。

  • 誠実さ
  • 面倒見の良さ
  • 信頼されること
  • コンプライアンス

これらは性格特性の列挙ではありません。スチュワードという役割を分解した構成要素です。

誠実さ

倫理的に行動し、正直であること。

他者の面倒を見ること

資源・人・環境を真摯に扱い、財務的・社会的・環境的影響にも目を向けること。

信頼されること

役割や権限を明確にし、利益相反を適切に扱うこと。

コンプライアンス

法令や規則、承認された要求事項を遵守し、疑義があれば助言を求める姿勢を持つこと。


4つは同時に求められる

これら4つは横並びではありません。

誠実な判断が、組織の短期的利益と衝突することはないでしょうか。

面倒見の良さが、厳しい意思決定を鈍らせることはないでしょうか。

コンプライアンスを優先するあまり、状況適応力を失うことはないでしょうか。

スチュワードシップとは、矛盾を単純化せず、その緊張を引き受ける態度です。


次以降の原理・原則を、スチュワードの視点で読む

原理・原則は、この後「チーム」「ステークホルダー」「価値」「システム思考」「リーダーシップ」と続きます。

チームを育てるのは誰の責任か。

価値を最大化するとは、誰の価値を守ることか。

影響力は倫理と結びついているか。

これらの問いはすべて、「スチュワードである」という立場からしか答えられません。

あなたの意思決定は、どこまでの影響を引き受けていますか。

PMBOKは難しいことを書いているのではありません。

現実の社会とプロジェクトの複雑な構造を、丁寧に、そして長く言語化しているだけです。

もしPMP試験対策として読むのであれば、用語を暗記することも必要です。しかし、そのことに本質的な意味はありません。

重要なのは記述を覚えることではなく、「この状況で自分はスチュワードとしてどう振る舞うか」を考える視点です。

現実社会においては、PMBOKに書かれていないケースも発生します。

そのような場合でも動じないこと。それが本質的な理解です。

その問いを持ち続ける人のもとで、プロジェクトは少しずつ健全に育っていくのだと思います。

 

▶ 次回:PMBOK第7版 原理・原則②|協働的なプロジェクト・チーム環境を構築すること


📚 参考

  • PMI『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第7版』

※本記事はPMBOKガイド第7版の学習・実践促進を目的とした解説記事です。引用・要約は学習目的の範囲で行っています。


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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。

用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。

参考書籍:PMBOKガイド第7版(Amazon)