PMBOK第7版の原理・原則を学ぶ前に、まず押さえておきたい前提があります。PMを目指している方、あるいは実務でプロジェクトマネジメントを担当しているが、思うようにプロジェクトが進まず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
スケジュールを引き、課題を整理し、会議を重ねている。それでも、なぜか安定しない。
多くの場合、問題は手法の不足ではありません。
「何を前提としてマネジメントしているのか」が曖昧なまま、テクニックだけを積み重ねていることに原因があります。
PMBOK第7版で強調されている「原理・原則」とは何か
プロジェクトマネジメントに関する知識体系として世界的に参照されているのが、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)です。
PMBOK第7版の「原理・原則」の章には、ステークホルダーへの配慮、価値志向、リーダーシップ、リスクへの適応などをまとめるように再構成されています。
これからPMを学ぶ方たちに対して、「何を拠り所に判断すべきか」を理解しやすい形に再構成したと捉える方が自然です。
多くの現場では、計画書や管理ツールは整っているにもかかわらず、プロジェクトが安定しないことがあります。
スケジュールは管理している。
課題も整理している。
それでも問題が繰り返される。
このとき不足しているのは、新しい手法ではありません。
「なぜその判断をするのか」という原理・原則への理解です。
これまでPMBOKで学んだ手法やプロセスを活かすための土台となる考え方を明確に示した構成となっています。
現場で「管理が形式化している」「ツールを使っているのにトラブルが絶えない」と感じているなら、それは手順の不足ではなく、原理・原則が意思決定に結び付いていない状態なのかもしれません。
生成AI時代だからこそ注意したい「第7版の誤解」
現在、多くの方が生成AIを活用しながらPMBOKを学習しています。
これは非常に有効な学習方法ですが、一方で注意すべき点もあります。
生成AIや解説記事では、PMBOK第7版について「プロセス中心から原理・原則中心へ転換した」と説明されることがあります。
一見すると分かりやすい説明ですが、この表現をそのまま受け取ってしまうと、第6版までの内容と第7版がまったく別の思想であるかのように理解してしまう可能性があります。
しかし実際には、第6版以前にもステークホルダーへの配慮、価値志向、リーダーシップ、適応的な判断といった考え方は数多く記載されていました。
第7版で新しい思想が突然生まれたわけではありません。
むしろ現場では、プロセスや手順だけが強く意識され、本来重要だった「考え方」が十分に理解されないまま運用されてしまうケースが多く見られました。
そのため第7版では、これまで点在していた重要な考え方を「原理・原則」として整理し直し、判断の拠り所をより明確に示した構成になっています。
生成AIの出力は学習の大きな助けになります。ただし、AIの説明をそのまま覚えることが目的ではありません。
重要なのは、プロジェクトで判断に迷ったときに、なぜその判断をするのかを自分の言葉で説明できることです。
第7版の原理・原則は、正解を覚えるためのものではなく、状況が変わっても判断できるようになるための考え方として整理されています。
PMBOK第7版の12の原理
PMBOK第7版で整理されている原理・原則は以下の12項目です。
- スチュワードシップ
- チーム
- ステークホルダー
- 価値
- システム思考
- リーダーシップ
- テーラリング
- 品質
- 複雑さ
- リスク
- 適応力と回復力
- 変革
これらは抽象的に記載されていますが、その抽象性こそが、あらゆる現場に適用できる理由でもあります。
ソフトウェア開発、建設、製造、地域イベント運営など、形は違っても「プロジェクト」である限り、同じ原理が働きます。
しかし、原理の前に“前提”がある
ここで重要なことがあります。
第7版は、いきなり原理から始まっているわけではありません。原理・原則に入る前に、以下のような「前提構造」が整理されています。
- プロジェクトは、組織の中でどのように位置付けられるのか
- 「価値」とは何か、どのように実現されるのか
- ガバナンスはどのように意思決定を支えるのか
- プロジェクトに関わる職務(役割群)は何か
- 内部・外部の環境要因がプロジェクトにどう影響するのか
- プロダクトマネジメントとプロジェクトはどう関係するのか
この前提を理解せずに原理を読むと、原理は抽象的な理念に見えてしまいます。
しかし、前提構造を理解した上で読むと、原理は実務の判断軸になります。
8つのパフォーマンスドメイン
第7版では、8つの「パフォーマンスドメイン」が示されています。
- ステークホルダー
- チーム
- 開発アプローチとライフサイクル
- 計画
- プロジェクト作業
- デリバリー
- 測定
- 不確実性
原理が「どう考えるか」を示し、パフォーマンスドメインが「どこを見るか」を示します。そして、これらは前提構造の上に成立するという点が重要です。
本シリーズの位置づけ
本シリーズでは、実務事例も交えながら、それぞれの原理・原則がどのように現場で機能するのかを整理していきます。
そして次回は、原理・原則の理解を支える「前提構造」そのものを掘り下げます。
プロジェクトは単独で存在するものではありません。組織の中で、戦略やガバナンス、定常業務と結びつきながら価値を生み出します。
この視点を持つかどうかで、PMの役割の理解は大きく変わります。
▶ 次回:PMBOK第7版 第2章の本質|外部PM時代に問われる「PMとは何か」
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PMBOK第7版の原理・原則を継続して学ぶ方は、シリーズ記事とあわせて書籍も参照すると理解が定着しやすくなります。
用語の確認や、原文のニュアンスを追いたい方は以下にリンクを置いておきます。